10年前に許可を取得して、新潟県内で営業している運送会社です。今回、運送の事業を拡大する計画となり、同じ新潟県内に営業所の新設を考えています。新設予定の営業所や車庫は賃貸物件です。賃料も発生するので、なるべく早く営業を開始したいのですが、新しい営業所を行政に申請する場合、どれくらいの期間がかかるのでしょうか?また、申請時に注意するポイントなどがあれば教えてください。
既に運送業許可を受けて営業している会社が営業所を新設する場合は、営業所を管轄する運輸支局に営業所新設認可申請をする必要があります。この手続きに必要となる期間ですが、順調に進んだ場合、営業開始までには約3か月~5か月かかることになります。
ご質問にもあるように、この間、新しい営業所や車庫が賃貸物件である場合、その賃料が発生することになります。したがって、営業所新設では「あらかじめ」「適切な」手続きの準備を行い、スムーズに行政の認可が下りるように進めていくことが大事です。
以下、営業所新設で必要となる申請手続きの流れと、注意しておきたいポイントを順にご説明します。
運送業の営業所新設に必要な行政手続き
まずおおまかな流れですが、手続きは
- 都市計画法、農地法、建築基準法及び消防法その他関係法令に抵触しないことの確認
- 幅員証明の取得
- 写真撮影
- 測量
- 申請書類の作成等
といった内容を進めていくことになります。
1つめは、都市計画法、農地法、建築基準法及び消防法その他関係法令に抵触しないことを確認します。要は、営業所、休憩睡眠施設、車庫を設置可能な場所かを確認するということです。
その中でも特に注意が必要なのが、都市計画法の確認です。
都市計画法などの確認
市街化を抑制する地域「市街化調整区域」は原則設置不可です。
一方、市街化区域は、都市計画法に基づき、都市を住宅地、商業地、工業地など13種類に区分し、これを「用途地域」として定めています。
まずは、営業所についてです。
例えば、用途地域が、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域(床面積1,500㎡超、3階以上は不可)は認められないことが多いでしょう。
上記の地域であっても、兼用住宅(事務所部分が50㎡以下かつ、建築物延べ床面積の1/2未満の場合)、昔からその場所で事業をされていた場合は可能な場合もあります。
また、第二種中高層住居専用地域では、3階以上の建物であっても事務所が2階以下にありかつ1500㎡以下であれば可能です。
続いて、車庫についてです。
無蓋車庫(屋根のない車庫)であれば、建築物ではないので、市街化調整区域であっても市街化区域であっても設置可能です。
用途地域は、市町村のサイトで用途地域マップが公開されています。
ご自身で、インターネットで調べた上で、各自自体に確認しましょう。
車庫前面道路の幅員照明
2つめは、車庫前面道路の幅員証明の取得です。
車両制限令で道路構造の保全維持または交通の危険を防止するため、通行できる車両の幅等が決まっています。要するに車庫出入口の前面道路が運送業に使用する車両に対して適切な幅があるのかどうか(幅員証明)が必要となります。
前面道路の種類によって幅員証明が必要かどうか異なりますので、順にみていきましょう。
公道の場合
- 国道→不要
- 県道→必要
- 市町村道→必要
私道の場合
「私道」の所有者からの承諾書と最初に通る「公道」の幅員証明が必要になります。
駐車場を契約した後に、幅員が不足していることが判明するというケースがありますので、ご注意ください。
道路幅員証明書は、県、市町村役場の該当の課に申請します。申請してから約1週間程度で証明書が発行されます。
営業所の写真撮影
3つめの写真撮影では、営業所、休憩睡眠施設、車庫の写真を撮影します。
営業所は、机、椅子、電話等の事業運営上必要限度の設備を含め撮影しましょう。
休憩施設は、休憩を取るのに必要な机や椅子、睡眠施設が必要でしたら、寝具も含め撮影しましょう。
営業所と集計睡眠施設が同室の場合は、パーテーション等で仕切る必要があります。パーテーションや備品等が間に合わない場合は、認可後に写真を提出しても問題はありません。
撮影のポイントは、四方から撮影し、写真とその写真がどの角度から撮影した写真かわかるように平面図に記載するとわかりやすいです。
写真については行政から補正を求められると手続きに余計な手間・日数がかかってしまいますので第三者からみてもわかりやすい写真を心がけましょう。
営業所や車庫の測量
4つめの測量についてです。
営業所や車庫の測量を行い、求積図を作成します。求積図は、手書きでも問題ありません。
特に車庫の測量は、車両がただ停められる面積では、要件に該当しないので注意が必要です。
車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50㎝以上確保され、かつ、計画車両の全てを収容できるものであることが必要となります。
その上で、他の用途に使用される部分と明確に区画されており、敷地内における車両の通行に支障がないこと・駐車スペースに物を置いたり、他の用途に使用しないことが条件となります。
今後増車する予定があれば、面積がどれくらい必要かを検討したうえで測量しましょう。
申請書類の作成
5つめの申請書類の作成ですが、これは1から4までの流れで取得した書類などを取りまとめて、申請書として行政にわかりやすい形で作成します。
申請書に添付する賃貸借契約書の契約期間は、賃貸借契約書に2年以上の契約期間の記載がある(2年未満の場合は自動更新の記載のある)ことなどが求められます。
行政窓口で指摘を受けてしまうことも多いので、その点は注意しておくほうがよいでしょう。
以上5つの手続きを完了するまで、つまり申請書類がすべてそろって押印済となる段階に至るまでには、手続きに慣れている行政書士の場合で3~4週間ほどかかります。もし、手続きに不慣れな運送会社さんが自社で手続きを進めるという場合は、それ以上の期間をあらかじめ見積もっておくほうがよいかもしれません。
(営業所、車庫の場所が決まっており、要件をクリアした場合となります。)
その後、1~5の作業を行い、営業所新設のための申請書を行政に提出完了すると、そこから今度は行政庁の審査が始まります。
この行政庁の審査にかかる期間ですが、認可が下りるまでには通常(補正期間を除き、)約1~3か月ほどかかります。
そして、運送業の営業所新設では、行政庁の認可が下りてから以降も、必要な手続きがいくつか発生します。
- 運行管理者、整備管理者の選任届の提出
- 連絡書の発行等の手続き
などがそれに該当しますが、これらの手続きを完了しないと、新たに設置した営業所で運送業を開始することができません。
ちなみに、認可後の手続きに必要な日数は、約1週間~2週間となります。
運送業の営業所新設の申請前に確認しておきたいこと
以上のように、これから運送業の営業所を新設する場合、営業が可能になるまでに3~5か月の期間を要することになりますので、適切に手続きを進めていくことが早期営業には必須です。
もっとも、営業所新設の手続きでは、行政に申請を行う際に別の問題を指摘されてしまい、そのぶん手続きが遅延してしまうというケースがよくあります。
当事務所にご依頼いただいた運送会社様の中にも、たとえば営業所に配置する車両数の変更届や、役員変更届などを提出することを失念されていたため、新設の営業所で運送業を開始する前提として、それらの変更届の提出を行政から求められるといったケースがあります。
補正が入ると、審査が止まってしまうので、申請前に変更届の提出漏れがないかを確認しましょう。
運送業の営業所新設の申請が難しいとき
営業所の新設では、ご質問のように賃貸の営業所や車庫を利用する場合も多く、早期の開業を希望される運送業者様が多くいらっしゃいます。
自社で手続きを進めていただく場合は、上で回答したように、申請手続きのポイントを押さえながら、また失念している変更届が無いかどうかなどにも気を付けて、手続きが途中で頓挫してしまわないように適切なスケジューリングで進めていくようにしましょう。
なお、営業所新設に関する手続きの全体がイメージしにくいとか、本業が忙しいためなかなか手続きを進める時間が取れない、失念している変更届がある、などお困りの場合は、行政書士に手続き進行をご依頼いただくのも一つの解決策となります。
トラスト行政書士事務所では、運送業者様のために、迅速・丁寧に手続きを進行いたします。お困りの際は、一度ご相談ください。