霊柩車事業と聞くと、ご自宅や病院から葬儀場までの短い区間での運行をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
しかし、人間の死は突然訪れることも多く、自宅や近所の病院などで息を引き取るとは限りません。旅行先や単身赴任先で亡くなり、県外からのご遺体搬送をしなくてはならないケースもあります。
遠距離を搬送してくれる業者は少なく、需要が多いため検討されるお客様がいらっしゃいました。
さて、このようなケースの場合、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。
お客様:こんにちは。現在、高齢者の方向けに施設経営やデイサービス送迎事業など様々な事業をやっているのですが、新たに霊柩車事業を始めたいと考えています。
トラスト;ご相談いただきありがとうございます。新たに霊柩車事業に参入されるご予定との事ですが、どのようなきっかけでお考えになられたのでしょうか。
お客様:はい。以前から霊柩車事業をやろうと検討していたのですが、同業者とのふとした会話の中で『県内だけではなく、県外からのご遺体搬送サービスをしようじゃないか』という話になりました。
トラスト:以前からご検討されていらっしゃったのですね。確かに霊柩車事業というと、ご自宅や病院から葬儀場までの短い区間での運行がイメージされますが、なぜ“県外からのご遺体搬送サービス”に着目されたのでしょうか。
お客様:実は、県内の大手葬儀会社でも、遠距離のご遺体搬送は受け付けていないみたいなので、ニーズは絶対にあるはずです。
トラスト:そうなんですね。県外からのご遺体搬送となるとかなり大変になるので、大手葬儀会社のほうがやってくれそうなイメージですが、実際は違うんですね。
お客様:高齢者だけではなく、若い方でも旅行先や単身赴任先などでお亡くなりになられることも100%ないとは言い切れません。ご遺族は悲しみの中、混乱されるでしょう。そんな時にスマートに対応できるようにしたいのです。
また、葬儀会社としても、県外からの搬送ができる業者を下請けとして抱えておきたいはずです。
トラスト:それは絶対に需要がありますね。では、霊柩車事業を始めるにあたり必要な許認可についてご説明させていただきます。
まず、霊柩車事業をするには、実はトラックで物を運ぶのと同じ【一般貨物自動車運送事業】の許可が必要になります。
お客様:“人”はお亡くなりになられると、法律上では“物”に扱いが変わるから、でしたっけ?
トラスト:その通りです。もちろん、ご遺体が単なる「物」であるとは考えていませんが、あくまでも法律上では“貨物”と区分されるため、【一般貨物自動車運送事業】の許可が必要になります。
お客様:わかりました。以前から霊柩車事業を始めようと思っていたのでその辺りは大丈夫です。
トラスト:この【一般貨物自動車運送事業】の許可を得るには車両が5台以上必要ですが、霊柩車事業の場合は1台から申請可能です。なので、通常のトラック運送事業を行う場合と比較して必要な要件が緩和されるのが特徴です。
お客様:それも自分で調べていて、まずは1台で申請しようと思っていました。要件緩和されて1台から申請できるのは、小さな企業である私達には大変ありがたいですね。
トラスト:ですが、ご注意ください。1台から申請出来るのは、“同一県内発着”の場合のみとなります。
お客様:“同一県内発着”のみ???新潟県内でしか運行出来ないという事でしょうか?
トラスト:いいえ、発着が新潟県であれば大丈夫という事になります。例えば、
新潟を出発して、東京でお亡くなりになられた方のご遺体を引き取り、ご家族が待つ新潟まで戻ってくる。
このパターンはお客様がお考えになられている事業の内容だと思いますが、新潟発着で同一県内となるため、これはOKです。
お客様: そうです。ずばりそのパターンを想定していました!
トラスト:良かったです!それなら大丈夫ですね。
お客様:ということは、“同一県内発着”というのは、一度県外に出ることは問題なくて、新潟に戻ってくればOKということですね。“発着”というから、最初『新潟を出発して、東京に到着。東京を出発して新潟に到着』という意味だと思いました。
トラスト:ややこしいですよね。許可証にも“県内のみ”であることが記載されるのですが、かんちがいされる方も多くいらっしゃいます。
対して、「新潟を出発して、東京でお亡くなりになられた方のご遺体を引き取り、大阪までご遺体を運ぶ。」というようなパターンは“同一県内発着”にはなりませんので、ご注意ください。
もし、県内だけではなく、県外まで範囲を広げて事業をされたいとなると、
- 5台以上の車両
- 【運行管理者】と【整備管理者】
を用意する必要があります。細かい要件は色々ありますが、まずはこの2点が必要となります。
お客様:要件がきびしくなる、というか緩和が無くなってしまうんですね。わかりました!とりあえず今のところ、事業の方向性としてはまだ同一県内発着で問題ないので、1台で申請したいと思います。