霊柩運送業とは?

事業として“霊柩車”を運行するには、トラックなどと同様に、「一般貨物自動車運送事業」の許可が必要となるのをご存じでしょうか。

ご遺体の搬送は、葬儀という仕事の中で無くてはならない業務ですし、最近は超高齢化社会の影響もあり、霊柩運送業のご相談も多くなっております。

また、この霊柩運送業許可があれば、いままで他社に依頼していた遺体搬送業務をワンストップで行う事ができ、そして自社の利益として売上げアップさせることができることから、事業参入を検討される企業様もいらっしゃいます。

そこで、このページでは、近年ご相談が多くなっている霊柩運送を行うための必要な許可について、詳しく解説します。

霊柩運送事業とは

大きな括りとして、『一般貨物自動車運送事業』という許可があります。

これは世間一般でイメージされるような、トラックでの運送事業を行う為の許可になります。

霊柩事業は、そのうちの“霊柩運送限定”という枠での事業になります。

つまり運送業の中でも遺体輸送を限定した事業で、これを『霊柩運送』といいます。

さて、亡くなった方のご遺体を【貨物】と呼ぶのには少し抵抗があるかと思いますが、実は民法上の規定で、「人」は亡くなると「物」に扱いが変わってしまうのです。

勿論、ご遺体が単なる「物」であるとは考えていませんが、あくまでも法律上では“貨物”と区分されるため、”旅客運送”ではなく”貨物運送”で搬送することになります。

貨物輸送の定義とは

  • 他人の需要に応じ
  • 有償で物(遺体)を搬送する

この2つともに該当すれば運送事業として許可を取る必要があります。

逆を言えば、その2点に当てはまらなければ、許可を取得する必要がありません。

違法行為

「無償で遺体の搬送をすれば良いんじゃない?」とよく質問されます。

たしかに運送事業の定義として、“有償にて”と記載されています。

では「当葬儀社は霊柩車の使用が無償」というよくある謳い文句なら、許可は不要なのではないか?と思われるかもしれませんが、残念ながら違法になってしまうのです。

もし、葬儀社のワンストップサービスとして霊柩車の使用を“無償”と設定しても、必ずどこか別のところで費用を乗せざるを得ないと思います。

もちろん霊柩車を購入した費用や維持費が発生しているわけです。

そうすると道路運送法という法律の営業類似行為とみなされてしまうわけです。

つまり、霊柩車を運用するということは必ず一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)の許可を取得する必要があります。

しかし、他人の需要に応じていない場合、つまり身内が亡くなり遺族が自家用車を用いて遺体を搬送する、といったケースでは許可は不要です。

また、とても稀なケースですが、霊柩車を買い物や通勤など、普通の自家用車として使用する場合は許可を取得する必要はありません。

犯罪行為に注意

自家用車で遺体搬送をすることができるといっても、遺体を物理的に損傷するような方法をとれば死体損壊罪(刑法190条)に問われかねません。

また、自宅に連れ帰った後に適切な処置を行わなければ死体遺棄罪(同)が成立しうるところです。

搬送中に、これらの犯罪を犯そうとしているのではないかと疑われて警察官から職務質問(警察官職務執行法2条1項)をされるおそれもあるので、慎重に判断しましょう。

霊柩運送事業の要件

この霊柩車事業の運送許可は、トラックでの運送事業をするよりも要件が緩和されており、個人・法人を問わず車両1台から申請することができます。

また登録車両が5台未満の場合は運行管理者及び整備管理者とも資格が無くても良いとされています。

車両1台から始められる霊柩運送業ですが、正式には一般貨物自動車運送事業として運輸局から許可を得なければ営業することはできません。

この許可要件を分かりやすく簡単に説明しますと以下の5点になります。

貨物軽自動車運送事業を始めるには、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 営業所・休憩施設・車庫の確保
  • 軽貨物車両の確保
  • 運行管理体制の整備
  • 整備管理者
  • 資金の確保

これらの許可要件について、順に見ていきましょう。

1.営業所

①使用権限

使用権限は、申請者にありますか?

特に、賃貸借契約書等の添付書類は不要ですが、使用権原がある旨を宣誓する必要があります。

なお、個人で開業する方のほとんどは、自宅を営業所とされています。

②立地条件

営業所に関する2つめの要件は、各種の法律上、その営業所の場所で貨物軽自動車運送事業を行うことが許されていることです。

より具体的には、都市計画法、農地法、建築基準法及び消防法その他関係法令に抵触しないことが求められます。また、許可申請ではその旨の宣誓書の提出が必要になります。

それぞれ、確認する必要がある法律の一部を見ていきましょう。

都市計画法

都市計画法では、事務所を設置することが不可能な地域ではないことが条件となります。

都市計画法における以下の区域においては、原則的に運送業の営業所として使用することはできません。

  • 市街化調整区域
  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域(一定条件の場合)
  • 第一種住居地域(一定条件の場合)

なお、「プレハブを運送業の営業所や休憩室として利用できますか?」という質問がよく寄せられますが、一定の条件を満たせば利用可能です。

建築基準法上の建築物とは、「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」と定められているため、プレハブ、ユニットハウス、コンテナハウス等も建築基準法上の建築物に当たります。

建築基準法の適用の範疇に入るので、そのままでは運送業の営業所として使用することはできません。原則基礎工事・建築確認申請をする必要があります。

※市街化調整区域内では、そもそも原則建築物を建ててはいけない地域になるため、建物に該当するプレハブ等も建てられません。

農地法

土地選びでよく問題になるのが、この農地法です。

希望する土地の謄本を確認し、登記上の地目が「田」「畑」でないかを確認する必要があります。

もし希望する土地が「田」「畑」であれば、土地の所有者の許可を得て、「農地転用」の手続きと「地目変更」が必要ですが、どちらもトラストの行政書士部門と土地家屋調査士部門で代行手続きが可能ですので、ご安心ください。

2.休憩・睡眠施設

続いて、休憩・睡眠施設の要件です。

営業所に併設が多いと思いますが、車庫併設でも可能です。営業所にも車庫にも併設されないことは避けた方がいいでしょう。睡眠を与える場合は、少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さが必要です。睡眠施設が不要な場合は、休憩できるソファーやテーブルがあると良いでしょう。また、使用権限、立地条件等は営業所と同条件となります。

営業所と休憩・睡眠施設は別部屋である必要はありません。同室の場合はパーテーションなどで区分されているといいでしょう。面積を申請書に記載する必要があるので、動かない仕切りが必要です。

3.車庫

まず、車庫は営業所に併設されるご予定でしょうか。

原則として営業所に併設するのが望ましいですが、併設できない場合は営業所からの距離が直線5km以内(新潟県の場合)であれば車庫として使用可能です。

また営業所と同じく、農地法や都市計画法など関係法令の違反していないことも必要です。

ちなみに、立地条件は屋根付の車庫の場合、市街化調整区域は建物を建ててはいけない地域なので、不可となります。

無蓋車庫(屋根のない車庫)であれば、建築物ではないので、市街化調整区域であっても市街化区域であっても設置可能です。

その上で確認しておきたいのは収容能力です。

収容能力

車両がただ停められるだけでは、要件には該当しません。

車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50㎝以上確保され、かつ、計画する車両の全てを収容できるものであることが必要となります。

その上で、他の用途に使用される部分と明確に区画されており、敷地内における車両の通行に支障がないこと・駐車スペースに物を置いたり、他の用途に使用しないことが条件となります。

今後、車両を増やす予定はあるのか?車を大きくする予定はあるのか?検討しながら、物件探しをしましょう。

4.車両

続いて、車両の要件です。

営業所毎に配置する事業用自動車の数は、1両以上あれば申請可能です。

ですが、車両は大きさや構造が遺体を輸送するのに適切なもの=車検証に形状が「霊柩車」となっているか確認が必要になります。

霊柩車両の種類は、宮型(霊柩車として一般的にイメージされる豪華なもの)、洋型、バン型、バス型があります。

ちなみに、軽自動車は別の事業となりますので、使用不可です。

それぞれ特性があるので、どの霊柩車両を導入するか検討しましょう。

なお、車両ついては、現に所有していれば車検証、リース契約の場合はリース契約書、購入する場合には売買契約書の添付が必要となります。

5.運行管理体制 

霊柩車の場合は、1営業所に4台までであれば運行管理者資格者証を持っている人がいなくても大丈夫です。

5台以上になると資格を持っている方の常勤が必要になるので注意しましょう。

5台未満の場合は選任のみで、資格は不要です。

ちなみに、運行管理者は運転手との兼務が不可です。

6.整備管理者

営業所ごとに最低1名は必要です。

5台未満であれば、専任するのみで資格は不要です。

整備管理者は、運行管理者と違い、運転手または運行管理者との兼務可能です。

7.資金

事業を開始するために必要な資金計画を作成し、資金計画以上の自己資金を準備する必要があります。

なお、「資本金」ではなく、事業開始に要する資金以上の「自己資本額」があることが必要です。

それでは内訳と目安について見ていきましょう。

 

 

人件費 役員報酬・給与・手当 6か月分
賞与 支給額×支払回数×1/2
法定福利費 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料の事業主負担分 6か月分
厚生福利費 給与、手当、賞与の2%
燃料費 月間走行キロ概算÷ℓ当たり走行キロ×ℓ当たり単価×5台分 6か月分
油脂費 燃料費の3%
外注修繕費 月平均×5台分

1年でどのくらいかかるかを月割りします。

6か月分
自家修繕費・部品費 月平均×5台分

1年でどのくらいかかるかを月割りします

6か月分
タイヤチューブ費 月平均本数×1本単価×5台分 6か月分
車両費 ・購入の場合

a.一括払いの場合は取得価格

b.ローンの場合は頭金+ローン1年分

・リースの場合

リース料1年分

施設購入・使用料 ・土地・建物購入費

a. 一括払いの場合は取得価格

b. 割の場合、頭金及び1年分の割賦金

・賃貸の場合

賃貸料1年分

什器・備品費 取得価格

新たに購入する備品等です。なければ0でも構いません。

※アルコール検知器の設置をお忘れなく!!

施設賦課金 自動車税及び自動車重量税、環境性能割

税事務所などで確認します。

1年分
保険料 自賠責保険及び任意保険

任意保険は御社にて保険会社さんへ見積もり依頼をお願いします。

1年分
登録免許税 12万円(許可後に納付します)
その他 旅費、会議費、水道・光熱費、通信・運搬費、図書・印刷費、広告宣伝費等 2か月分

 

この資金計画書は、人件費、燃料費、油脂費、修繕費、車両費、施設購入・使用料等、様々な項目を細かく計上しなくてはならないのですが、ご自身で作成できないとお困りの声が多々あります。

トラストにご依頼いただければ、お客様からヒアリングを行った上で作成させて頂きます。

また、よく、「実際どのくらいの金額が必要でしょうか?」とご質問頂くことがあります。

例えば、営業所や駐車場が自己所有か賃貸なのか、霊柩車を既に所有しているかこれから購入するかなど、事情によりご用意いただく金額が変わってきますので、事業を開始するために必要な資金は、一概に○○万円と言えません。

また、所要資金の全額以上の自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていることも必要となります。

預金残高証明書の提出は、運送業の許可申請の日と役員法令試験合格後の運輸局が選んだ任意の日の2回になります。

預金残高証明書の発行日において、自己資金が資金計画の所要資金を下回ってしまうと、申請の取下げになりますので、何度も記載してますが、必ず常時確保されているようにご注意ください。

まとめ

霊柩車とトラック運送業との違い

  1. 1台から始められる
  2. 5台未満であれば運行管理者・整備管理者は資格不要。
  3. 霊柩事業は発着が必ず同一県内のみ

『霊柩運送業』の申請手続きは、『一般貨物自動車運送事業』に比べ要件が緩和されているとはいえ、決して簡単とはいえない手続きです。

許認可申請の専門家である行政書士でなくても、ご自身で手続きを行う事も可能ですが、運輸局が出している手引きに記載されている必要書類をただ揃えて運輸局へ提出すれば許可を取得できる、というようなものではありません。

スピーディーかつ確実に許可を取得して運送事業を開始したい方は、許認可申請の専門家である行政書士にご依頼ください。

トラスト行政書士事務所では、司法書士部門・土地家屋調査士部門を併設しているので、

付随する様々な手続きが発生しても、ワンストップでご依頼いただく事が可能です。

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